滅び行く種

アフリカ象があと15年で絶滅する。という。
以前、恐竜CGを作るときに監修してもらった先生に「絶滅」について教えてもらった。恐竜が絶滅した理由は個々の事情によるだけだ。というもの。なぜなら「絶滅」の瞬間は1頭だからだ。
恐竜も長い間繁栄を誇り、あるとき突然終焉を迎えたように見えるが、実はそうではない。その繁栄の間にもさまざまな種が栄えては滅んでいる。ちなみに最後はトリケラトプスなのだそうだ。
よく議論される氷河だ、隕石だ、というのは、そういう事情もあったかもしれないが、それだけで最後の1頭が死んだわけではないのである。
まあしかし、これを聞いて思うのは、では我々が興味があるのは、絶滅の原因ではなく、先細った原因であろう。
その先生は例を出した。「象はとても豊かなバリエーションを持っていた。それが今やアフリカ象とアジア象(インド象)の2種類しかいない。おそらくそう遠くない未来に絶滅するだろう。そうなった理由は複雑だ。人間の文明、環境悪化、温暖化のせいかもしれないが、その前から先細っていたのかもしれない。ただその最後の1頭が死ぬ理由は、個々の事情によるものである。」

種の絶滅について、それを良しとすることは難しいらしい。各大学のESSのディベート部門は、必ずいくつかの「必殺技」を持っているそうであるが、種の絶滅については、どこかの大学の必殺技であると聞いたことがある。反駁できないような事実に結びつかせてディベートで勝つわけである。

ただ、バリエーション豊かな象の化石はなかなか滑稽で、ダリの絵に出てきそうなやつもいるくらいなのだ。種の絶滅も自然の摂理ではある。食い止めることは自然に反しないのか。人の営みが自然に反しているからといって、保護などの埋め合わせをするのは、また浅はかな上塗りではないのか? 無理に「本来の姿」を想定するより、もっと自由にデザインしていいのではないか? シロクマが絶滅したらかわいそうだから保護するが、蛭や蚊は絶滅してもいい。そんな気がする。